困った。
困った困った困った。
何に、困ったかって。

明日4月20日は、丸井ブン太(15)の誕生日=彼氏の誕生日。
彼氏と言えば、男の子であって。女の子ではない。ということは、いろいろ困るわけだ。
何をやればいいかなんて全くわからないし、
基本的自分の欲しいものをあげるのだが女の子じゃないのでそれを喜んでくれる可能性は極めて低い。

ぎりぎりまでいつも通り「まあその時になるまで考えればいっかー」という考えでいたので、気づけばいつの間にか明日になっていた。
誕生日プレゼントなんて、考えてもいなかったのだ。

困った。
困った困った困った。
どうすれば、いいかなんて。全然わかんない。

やばい、焦りで思考停止してる。落ち着け、落ち着くんだ自分ッ!
男子で参考になりそうで、頼りになりそうな男…

「何しているんだ、

そう。そうだよ。あたしにはこの人がいた!マスター、あたしはアンタが大好きだ!



丸井ブン太誕生日おめでとうSP(?)!「無敵なスマイル!」




「つまり、お前はブン太がここ最近そわそわしていたのを全く気付かずに
今まで何も考えず誕生日だということすら危うく忘れそうになっていた、と」

棘しかないバラに触ってしまった気分だ。「はい、そうです…」としか答えようのない返事に、もちろんそう答えた。
そんなにブン太はそわそわしていただろうか。全く気付かなかった。
さすがデータマンだという褒め言葉は、今や彼にとって媚びにしか聞こえないだろう。

「で、助けてほしいんだけど…」

しばらく黙っていた柳が、はぁとあからさまにため息をついて困ったように笑った。「しょうがないな、かわいい妹分の頼みだ」
「やーにゃーぎー!」と叫びながら柳の手を取って無理やり握手。「ありがとうありがとう!」と何度も言ってから早速。

「じゃあ今日の放課後にデートね!それまでにあたしも考えてくるから、
柳のもらってうれしいものとかブンちゃんが喜びそうなもの考えといて!」

んじゃ!と片手をあげて屋上を出ていく。今から三時間目の授業が始まるので、さすがに三時間ぶっ続けでサボるわけにはかない。
きっと柳のクラスから屋上でサボっているのが見えたのだろう。だからきっと柳は屋上に来た。にとっては天の助けと化したが。

「まったく、困りものだ」

ふぅ、と息を吐く。またここにも、困った人が一人。




そういえば、ブンちゃんのキャップをかぶった姿をみたことがない。とはぼーっと黒板を眺めながらその姿を想像してみた。
少し子どもに見えるが、似合わないことはない。むしろ、似合うと思う。

テニスのキャラにキャップをかぶったキャラクターは多い。
青学にリョーマ、氷帝に宍戸、立海は真田で比嘉に裕次郎。あと六角に木更津兄。
探せば他にもいるが、代表的なのはこの六人だと思う。
そこにブンちゃんを入れてみるって言うのもいいと思う。真田が黒い帽子だから、ブンちゃんがカラフルとかだったらいい。

よーし、あたしの意見としてはキャップでいこう。




はっきり言ってしまえば、がやるものならブン太はなんでも喜ぶ、というのが本音だ。
甘いものを一緒に食べ行くのも喜ぶだろうが、あいにくは甘いものを好まない。そうなると、他には特に喜ぶものは考えつかない。

そう言えば、今年の夏は去年よりも暑くなるとのことなので帽子や日焼け止めでもどうだろうか。





ここ数日そわそわしていることを、きっとみんなは知ってる。
落ち着きのない行動を取っているのは、自覚している。ブン太は外の景色を眺めながら最近の自分の行動を思い出していた。
あからさまにがいるときといないときのテンションが違う。
何か聞かれたりしても返事してなくて何度も言われたり、酷くて一回何もないところで躓いたりもした。

はぁ、とブン太はため息をついた。
は何をくれるのだろうか。もしかして、くれないという可能性もある。考えすぎるので、考えないようにしてたら忘れてました、とか。
ありえる。なら十分にありえる。

はぁ、ともう一度ため息をついて黒板に書いてある今日の日付を見てから外へと視線を戻した。





、俺が思うにブン太はお前があげるものならなんでも喜ぶと思うのだが。
参考としては今年の夏は暑くなると言っていたので帽子や日焼け止めがいいと俺は思うが?」

部活を終えた柳が、中等部に来て言ったセリフがこれだった。は「あたしも帽子がいいと思ったんだけどー」と賛同する。
「言ってしまえば、ブン太と一緒に選んだほうが、あいつは喜ぶかもしれないぞ」
しばらく黙って柳を見ていたが、「あぁ」と納得したようにうなづく。「その手があった」

「そうだよねー。普通そう考えるよねー。やっぱりあたし切羽詰まってたんだ。うん、そうしよう。ありがと、柳」

助かったよ、とつづけると柳は笑う。「いや、かわいい妹分の頼みだ」
もう一度は礼を言って、すぐさま高等部へと走り出した。




ふらふらと歩く赤い髪を見つけて、は苦笑しながらその背中を追った。
確かに、ちゃんと見ればブンちゃん変だったかもしれない。なんで気付かなかったんだろ。

「ブンちゃん、ねえ今日デートしない?」

手を取って立ち止まらせると、振り返ったブン太にそう告げる。目を丸くしたブン太が、「いいけど、よ…」と何か言いたげに答える。
「ブンちゃんの誕生日プレゼント、帽子にしようと思うんだけど一緒に選んだほうがいい気がして」
柳が提案してくれた、と言えばブン太がきっと怒るだろうから言わずに、「だからデートしよう」とつづける。

「だってほら、ブンちゃんそわそわしてるのなんて似合わないジャン?」

覚えてたんだ、と言えばきっとが怒るだろうから言わずに、「そうだな、似合わねー」と笑った。







日付が20日に変わったのを携帯で確認して、メールを送信した。

Dear:ブンちゃん
本文:これから先もずっとずっと、ブンちゃんが笑顔でいられますように。
   これから先もずっとずっと、あたしがブンちゃんの隣りにいられますように。
   今年もいい年にしようね!




+あとがき
ブンちゃん誕生日おめでとー!なんかよくわからなくなってしまいましたが、とにかくおめでとうということで!
タイトルのSPは何がSPかは気にしないでください(笑)
今年の夏も、ブンちゃんにとってよいものでありますように。