*若干下ネタです。苦情は受け付けません* 「・・・何で俺が・・・」 「それを言うなら何で私が、だよ」 買出す物が長々と書かれた紙を見ているの傍で日吉がため息をつくと、彼女も負けじと大きなため息を返した。 岳人と宍戸を愛でたいと言うに半ば引きずられるように連れて行かれたが、雑用まがいな事をしていると、 優雅に歩いてきた榊についでに買出しに行ってくれないかと頼まれたのだ。 氷帝テニス部のマネージメントは平部員が交代でやっているらしく、必然的に部活終了後から仕事が始まるらしい。 疲れきっている上に慣れない男手ではいくら注意深くこなしても粗が残る。ゆえに猫の手でも借りたい。他校の仮マネの力でも借りたい。 つくづく迷惑な話だ、と思っても小心者のが嫌な顔など出来るはずもなく、 「はぁ」で引き受けると、次に荷物もちが必要だと言う話になった。 「平部員でも連れてくかね?」と言う榊の言葉に、「そうですねぇ」と相槌を打っていると、 近くで日吉と会話をしていたはずの跡部が首を巡らせ、「監督、俺が」と言おうとした言葉をは遮る。 「日吉!日吉がいいですッ」 「・・・あぁん?」 眉間の皺が当社比二倍位深くなった。ほくろも引きつっている。 そんな跡部を見て、日吉は心底迷惑そうに「俺を巻き込まないで下さい」という顔をしたが、はガンとして譲らなかった。 「跡部君部長だし。買出し程度でお手を煩わせる訳にはいきません。 おまけに私って人見知りじゃないですか・・・対人恐怖症の上に人見知りじゃないですかッ!?」 「嫌、大声で言えるような事ではないと思うのだが・・・「とにかく日吉がいいです!」 ・・・分かった、日吉、いってよし」 が回想を終了させると、日吉も自分が買出しに引きずられた経路を思い出したのだろう、「何で俺が」ともう一度呟く。 「だってさ、跡部君と買出しに行ったりしたら目立って気が気じゃないんだもの」 「あの人は目立つのが生きがいみたいなものですからね。それにしても、俺以外にまだ面子は居たでしょう」 「平部員だと多分跡部君に言いくるめられるし、鳳君と宍戸君は試合してたし、がっくん連れて行くとに怒られそうだし、 ジロー君どっかに消えてたし、樺地君は会話が続かないし・・・忍足君はそもそも論外だし 消去法で日吉になったって言うか・・・あ、嘘です!日吉しか頼る人間が居なかったんですよ!さすが下克上ッ」 踵を返して帰ろうとした日吉の袖口を掴んだがまくしたてると、呆れた顔で日吉は再び彼女の横を歩きはじめた。 「下克上を変な日本語でほめ言葉にしないでください」 なんだかんだ言って優しいなぁとほっとが胸をなでおろしていると、「ちょっといいかな」と後ろから声をかけられて、二人は振り返る。 見ると、カメラを抱えた人と紙とペンを持ったいかにも取材班です、と言う人たちが居て、 状況についていけない二人がほうけている間にパシャッとフラッシュがたかれてシャッターが切られた――なんだなんだ パチパチと瞬いていると、おくればせながらと紙とペンを持った男が手を差し出す。 「突然ゴメンね。今学生のカップルを中心とした雑誌の特集をしててさ、君達があまりにも仲いいものだからつい」 仲がいい?意味が分からないという顔をした二人が視線をおろすと、の指先が日吉のシャツを握っていた。 「ぎゃ」と悲鳴を上げて手を離したが「カップルなんかじゃありません!」と言い、日吉も力強く頷いたのを見た男の人は苦笑を零す。 「って言われてもねー。俺達もなかなかいいカップルが見つからなくて困ってたんだよぉ。 そんな時に現れた君達は救世主だ!どう?これを機にカップルになってみるって言うのは・・・」 「そんなコンビニに行こうかみたいなノリで付き合える訳ないでしょう!」 「大丈夫だって、俺達のコーナーで特集されたカップルは幸せになるって言う伝説があったらいいなって思ってたところだから!」 「お兄さん雑誌の編集者やるより、お笑いの方が向いてるんじゃないですか?」 「ハイじゃぁ質問ねー」と男は明るくのツッコミを流した。 どうしよう、と日吉を見上げてみたが、どうやらまだ状況を飲み込めていないようだ。 下克上を掲げている割に逆境に弱い男である。頼れるのは己のみってやつか。 逃げようにもいつの間にか辺りを囲まれていて、気を抜いたら写真を取られる始末だ。 周りの人の視線が痛い。何これ、取材と言う名の公開処刑か何かですか。 雑誌なんかに載ってたまるかとからっきしの頭を働かせたは、「彼氏のどこが好きなのー?」という質問に、真顔で答えた。 「この髪型ですかねきのこ」 「あー独特な髪型だもんね」 「きのこっぽいですよねきのこ」 やっと正気に戻った日吉が「ちょ」と言っての腕を引く。 「何言ってるんですかさん!」 「逃げれないんだから、終わらせるしかないでしょう」 「こんなん部員に見られたらなんていわれると思ってるんですかッ」 「だから載せられないように語尾にきのこ付けてるんでしょうが!」 「訳の分からない混乱のしかたは止めてください!なんですかそのとりあえずしゃくれとけみたいなノリはッ!」 「だったら日吉なんかいい方法浮かぶの?きのこ」 う、と日吉が言葉に詰まると、男が「へぇ、じゃぁ彼女きのこが好きなんだ?」と尋ねて来、はいいえと首を横に振る。 「ぶっちゃげしいたけとか臭いがキツイじゃないですか、味もなんか独特だし。だからきのこ克服したくて彼と付き合ったんですけどーきのこ」 「あはは。彼氏きのこ克服する為に利用されてるじゃーん」 何気なく話題を振られた日吉は、頬を引きつらせると数秒押し黙った後、小声で返した――「し、心外ですね・・・きのこ」 思わず噴出しそうになったが顔を逸らすと、日吉は腹いせに思い切り彼女の足を踏んで、この世の不幸を一身に背負ったような顔をする。 「そっかー、二人はどこら辺まで関係がすすんでるの?」 え、これ学生向けの取材じゃないんですか?と思わず素で尋ねると、「読者は素直な回答を求めてるんだよ」と言われ、は苦笑を零した。 「清い関係ですきのこ。 昔マタンゴって言う映画があったじゃないですか、きのこ食べた人がどんどんきのこになる奴。 あの話を母の友達から聞いているので、食べたり食べられたりはちょっと・・・きのこ」 「でも彼氏は色々したいんじゃない?」 「いえまったく」 にわき腹をつつかれてから、嫌々「きのこ」と付けると、男は「それで彼女は彼氏と付き合ってきのこ好きになった?」と聞いて来、 その質問を待ってました!といわんばかりに瞳を輝かせたはつんとそっぽを向いた。 「ぶっちゃげもっと嫌いになったって言うかーきのこ。何かもう見るのも嫌になったしー、あーマジムカツク!もう知らない!きのこッ」 脈略もなくわーんと泣き出したが急な展開についていけない取材陣にタックルせん勢いで囲まれていた所から逃げ出すと、 彼女の意図が分かったのだろう、日吉が「おい!きのこ!」といって追いかけてくる。 そのまましばらく走って、二人はようやく足を止めるとずーんと影を背負った。 「穴があったら入りたい・・・」 「って言うか、喧嘩する振りするならきのこを言う必要性まったくなかったじゃないですか・・・」 「行き当たりばったりだったから何も考えてなかったのよ。 でもここで恥かくのと、部員に見られて恥かくのだったら断然こっちの方がよくない!?」 「まぁ・・・それもそうですね。疲れましたからさっさと買出し行って帰りましょう」 □一ヵ月後□ 「・・・てめぇ、これは一体どう言う事だ。あぁん?」 呼び出されたが部室に着くと、日吉は部室の隅で膝を抱えて落ち込んでいて、 目の前に突き出された雑誌を見た彼女はぎょっと目を見開いた。 そこには、あの日撮られたと思われる自分と日吉のツーショット写真、見出しは「今月一番のバカップル」である。 思わず手を伸ばしてそれに視線を落とすと、活字に目を走らせたは血の気を無くすように頬を青白く染めた。 『じゃぁ彼女きのこが好きなんだ?』 『もう一日三食しいたけ汁飲む位好きなんですーきのこ。 初めて彼を見た時から運命を感じたって言うか、きのこの神様ってホントに居るんだなって・・・きのこ』 『二人はどこまで関係が進んでるの?』 『ABCからZまでって感じですかねきのこ。彼とならきのこになってもいいって感じですよきのこ』 『彼氏愛されてるねー』 『ははは。俺の胞子が好きなんですかねーきのこ』 その後喧嘩して去ったはずなのになぜか会話が続いていて、最後の分には 『きのこって言うのはダーリンやらハニーやらと同じ意味だそうです。二人だけの世界って感じでしたよ』とカメラマンのコメントが 「え?何これ?って言うか語尾のきのこしかあってねェエエエ!!???」 っつーかカメラマンさん何その感想ッ!そんな事言ってませんから! 読者は素直な回答を求めてるんじゃなかったの!?とが雑誌を食いつくように見ていると、 跡部は「てめぇらがそんな関係だとは知らなかったぜ」と地を這うような声を出した。 「ちょ、これ信じるんですか!?大体日吉の回答だなんて爽やかだし下ネタ過ぎるでしょッ、こんな事日吉が言うか!」 「記者が記事を捏造するのは犯罪なんだよ。んな事するわけねぇだろ、と言う事はここに書いてる事は真実だって事だ・・・ マイナー雑誌だから俺様が見ないと思って油断したのか?あぁん?」 「目、目が据わってますよ跡部君!だから捏造なんですってッ!」 必死で弁解していると、ドアが開いて忍足と岳人が入ってくる。 彼らは日吉とを見ると、にやにやといやらしい笑みを浮かべた。 「なんや、今日も日吉に会いに来たんかいなきのこ」 「先輩出し抜くなんて生意気だぜきのこ」 「「ギャァアアアアアア!!!!!!」」 ■おまけ■ 「あっはっは!アイツの悲鳴あげた顔最高だったなッホントあいつからかい甲斐があるぜ」 「俺らがあんな記事信用すると思ったんやろか。せやけど跡部、結局その雑誌発行した会社どしたん?」 「あぁん?潰したに決まってんだろうが。アイツをカモにしなきゃ放っといたのにな、バカな奴らだ」 「日吉、何見てるの?」 「嫌、写真だと越前先輩だなぁと思って・・・な、何でもない!」 ツーショットが嬉しい日吉 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ なんかもう色々スイマセン。あったのはノリだけなんです |