――「ふんだ!真田がそういう言い分なら、あたしにだって考えがあるもんね!
この賞状あたしがもらうから!
それに、あたしもうマネージャーやめる!引き留めても絶対撤回しないから!!に二言はないよ!!
ッ真田なんか大ッ嫌いだぁぁああ!!」
あれから五日。
はしぶとく部活に行かず、東京らへんをうろうろ散歩していた。
「ゆーた!!」
「っうわ!お前なんでここにいんだよ!!」
ルドルフに突然訪問してみたり、それでルドルフのみんなと仲良くなったり。
裕太とメルアド交換したり、柳沢とバカ澤と淳と戯れたり。そして、観月さんにのことをたくさん質問されて。
「仁さんあーそぼ!」
「っち」
山吹に遊びに行って、部活を面白くなさそうに見ていた亜久津とだべったり。
壇ちゃんときゃっきゃ言って遊んだり、山吹のみんなと買い物に行ったり。
それはそれは充実した・・・
「お前そんなことしてるなら部活来い!」
ゴンッと容赦ない鉄拳が落ちてきて、頭をさすりながら赤也を見上げる。
「あたしが居なくて困ることなんかないじゃん」
「・・・まぁ、そりゃそうだけど・・・」
レギュラー専属ではないが、部内には数人マネージャーがいて、しっかり仕事してくれるので、なんの支障もないはず。
ふんっと、わざとらしくそっぽを向くと、ぱたぱたと廊下を走ってリビングに逃げていった。
まだまだ夏休みは続き、さすがに退部届けもまともに出さずにずっと行かないのもどうかと思い(小心者)、
しかたなく登校して、ちらりとテニス部を見ることにした。(ちらりと、だよ!)
「やーくまぬ生徒か?」(お前ここの生徒か?)
「・・・は?」
ポン、と肩に手を置かれ、語尾だけ日本語とわかる原語を発した人物を振り返ると、その人物とは。
「えっと、何て言われたんですか?」
「君はここの生徒ですか、と聞いたんですよ」
神の島、沖縄から比嘉中テニス部が君臨されているようで、凛・木手・知念が立っていた。
凛が話しかけてきたようで、そりゃべったべたなうちなーぐちな訳だ。
木手が通訳してくれたおかげで、「はい、そうです」と返事ができた。
「テニス部ぬ場所知っちょん?」
「・・・よかったら、案内しましょうか?」
相変わらず話しかけてくるのは凛で、木手は通訳役らしく、知念は無言。
案内しようか、と言えば、「おう」と返され、とりあえず案内することになってしまった。
隣を歩く凛の髪が、うるわしくて眩しくて。
バクバク言っている心臓が、うるさくて少し胸を押さえる。
あぁ、まさかリンリンに会えるとは!
あたし、よくリンリンってわかっても悲鳴あげなかった!偉い!!
自分を最大級に誉めながら、テニス部のフェンスが米粒ぐらいに見える場所で立ち止まり、
「あそこのフェンスのところです」と指さした。
見つかってはならないため、遠くから指さす程度しか案内できない自分が恨めしい。
見つかるな、見つかるな!
ここらへんをテニス部が誰も通っていないことを祈りっていると(特にレギュラー)、頭を掴まれた。
ぐっと潰れた蛙のような声を出し、無理矢理顔をそちらに向けさせられる。
「ッひ!」
「よぉ、。元気そうじゃの。五日間さぞ充実した日々じゃったろ。さぁて、も来たことじゃし、真田に報告してくるかの」
「きゃあああ!!やめてください!やめてくださいぃぃい!!」
きっと三人が見ているのだろうが、もうこの際関係ない。
地面に頭をこすりつけながら「お願いします!帰りたいですコノヤロー!」と土下座する。
ニヤリと笑って、「頭を上げんしゃい」と言った仁王に、涙目で顔を上げると――
「真田!!来たぜよ!!」
「ぎゃぁぁああああああ!!!」
えぐえぐと涙を流しながら「鬼!悪魔!詐欺師ぃぃい!!」と連呼するが、仁王はほくそ笑んだまま。
だんだん近くに来ている黒い帽子を見つけて、後ろに立っていた知念の後ろに隠れる。
知念はびっくりしながらも、背に隠していてくれた。
「」
「っひぃ!」
いつもより低い声(想像です。)で名を呼ばれ、本日二度目の小さな悲鳴を上げる。
知念の服の裾をぎゅっと強く握って、がくがくと震えながら、ぼろぼろと涙が溢れてきた。
「怒りはせん。出てこい」
なんだこれは!これじゃあたしが悪いみたいじゃん!
まるで立てこもりしてる犯人のような気持ちで、必死に知念の背に隠れる。
そう思っていると、頭の上に手を置かれた。
「、誰も怒ってはいないぞ」
見上げると、まるで神様のように立っている(想像です。←二回目)柳。
「わぁん!」と言いながら柳に抱きつき、「真田が怖い!」と何度も叫ぶ。
「を!じゃんか!ジャッカル!来たぞ!」
「さん、やっといらっしゃいましたか。」
「やっと戻ってきたか」
ばたばたとレギュラー陣が勢揃いして、赤也は後ろからに抱きつく。
「そちらの方は?」
「わんたちやうちなー代表中テニス部ばーよ」(俺たちは沖縄代表比嘉中だぜ)
柳は親子ガメのようにひっついていると赤也をひっぺがす訳でもなく、そのままの体勢で三人を指す。
正体がわかったところで、三人は部室へと案内された。
「ほぉ。研修旅行」
感心したようすで、隣に座っている真田が言った。
逃げようとするも、襟首を掴まれてそのまま連行され、柳・真田と共に部室にいる次第である。
三人に向き合うように座っているせいか、何故か視線を浴びているような気がして顔があげられない。
「我々は練習を続けるが・・・」
「俺たちの事は気にしないでくれれば結構です。」
そうか、と返した後、柳と一緒に真田は部室を出ていった。
ちょっと待って!あたしは!?
そう思いながら真田の背中を見ていると、凛が隣に座る。
「わんや平古場凛。ゆたしく」(俺は平古場凛。よろしく)
「切原です。よろしくお願いします」
表面では穏やかに挨拶したものの、内心心臓が破裂しそうで、バックバックと音をたてている。
「やー、わったーが案内してくれって言ったから怒られたぬか?」(お前、俺らが案内してくれって言ったから怒られたのか?)
心配そうに顔を覗き込まれ、「いえ、違いますよ」と返す。
「もともとあたしが悪かったわけですし。皆さんは全然悪くありません」
「そうですよ、平古場君。それにしても、関東準優勝の立海大付属中がこんなおふざけとはね。がっかりです」
その発言は、きっと先程の戯れの事だろう。
立海を馬鹿にされたのは、聞き捨てならない。きっと眉尻を上げ、木手にを睨む。
「”お遊び”?あんた喧嘩売ってんの?
みんながどれだけ練習詰めて、どれだけ自主練して、どれだけ一生懸命戦ったかも知らずに、
間近でどんな戦いするのかも見てない癖に、あんたよくそんなこと言えるよね。
みんなは大会の時、普段とは比べ物にならないくらい、すっごい強くなるんだから。
真面目に練習して、それだけが勝ちにつながるとは限らないでしょ。
みんなのコンビネーションと繋がってる心があるから、高みまで目指して、そこに達することができるんじゃないの?」
バシッと木手の目の前で机を叩き、マシンガンのように言葉を発し、「ねえ、違うの?」と最後に続ける。
レギュラーと戯れていたところを見られたにしろ、それまで大人しそうにしていたので、木手は面食らった顔をしていた。
「あんたらどれだけつらい練習してんのか知らないけど、他校馬鹿にしていいほど実績上げてるわけ?
馬鹿にしてる暇あるんなら、練習見ていいところ取り入れて、もっともっと練習すべきじゃないの?
その為の”研修旅行”なんでしょ。
っていうかね、さっきのは、みんなからあたしへの愛!愛!愛!!」
さすがに沖縄の殺し屋に喧嘩を売るのは勇気がいったが、どうしても馬鹿にされたことは許せなかった。
どんなに沖縄ファンでも、それだけは許せない。
睨んだままでいると、木手は口元を隠して、微笑した。
「面白い人ですね。さっきまでは引目だったのに」
「あたし、演技だけはうまいって言われるんです」
木手が笑った!(クララが立った!的な感じで)
今度は凛と知念が面食らった顔をして、すぐに笑い出す。
「アチャーわんたち自由行動ぬーがしが、神奈かーらとい東京都か案内してくれねーらんか?」
(明日俺たち自由行動なんだけど、神奈川と東京案内してくれないか?)
「・・・はい?」
「明日俺たち自由行動なんだけど、神奈川と東京案内してくれ、と言っているんですよ」
「あ、なるほど。」
「で?」
「いいですよ。明日は部活も無いですし。」
何故か気に入られたみたいで、明日の約束をして、その日は部活を見て昼頃に、三人は帰っていった。
たまっていた洗濯(なぜレギュラーのだけ?)を片づけて帰れ、と言うことで、洗濯をし終わったのは三時ごろだった。
部員は全員まだ練習中だし、まだ明るいので、一人で帰ることにする。
校門を出たところで、隠れるようにして座っていた凛が、の肩を叩く。
には死角だったので、驚いて「うをわ!!」と訳の分からない悲鳴を上げてしまった。
「わんと・・・わんとデートしてくれ」
彼は、出来るだけ標準語で喋ろうとしてくれたので、変な音程だったが意味はわかった。
・・・デー、と?
「今何と?」
「わんとデートしてくれ」
いや、真顔で言う言葉か、それは。(真顔で言う言葉です。)
しかも、よく見れば知念も木手も居なく、凛一人がを待っていたようだった。
「あらんか?」(ダメか?)
「アスラン?(SEEDネタ)い、いいですよ、別に。」
どうせお出かけ程度のことだろう、と思い、軽く返答する。
パッと顔を明るくして、の手をとり、「おっしゃ!まー(どこ)いく?」と笑顔で言う。
「(無難に)デパートでも行きます?」
やっぱりリンリンは女遊びが好きなのだろうか、と内心ガッカリしながらも、
でもやっぱ純情・嫉妬キャラだろ、リンリン+甲斐は。自分の中の萌を主張していた。
が帰ろうとしていたので見送ろうと、校門まで追い掛けて赤也は立ち止まった。
「わんとデートしてくれ」
「いいですよ、別に。」
不幸中の幸いというか、二人は赤也に気付かずに話を進めている。
沖縄のヤツはの手を握り、は平然としていた。
違うだろ、行きたくないって言えよ。
初めて会った奴に軽々と着いていくな、って何回言わせるんだよ。
「そういうことじゃねーだろ」
俺が、今言いたいのは、そういうことじゃない。
に、行って欲しくない。
俺だけを見て、俺だけのそばにいて、俺のためだけの笑って欲しい。
なのにあいつは、いつもほいほいどっかに行って、思い通りに行動しない。
に対する気持ちの変化に気付いてから、いつもそう思う。
けれど、そう思うのに何も行動を起こさない自分も恨めしくて、その事実から目を背けようとする自分に苛つく。
「」
名を呼んでも、アンタは俺に振り向かないから。
どれだけ叫んでも、アンタはそれに気付かないから。
クッと下唇を噛み、ラケットを強く握りしめた。
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うちなーぐち、わかりません・・・
昼ドラみたいとか言わないでッ←逃走
