UMA愛好会。
が、まだステージに乗る前に、配られていたパンフレットに乗っていた模擬店の名前だ。
UMAとは?
未確認動物のことで、日本では英語の Unidentified
Mysterious Animal(読み:アナイデンティファイド・ミステリアス・アニマル)(謎の未確認動物)
の頭文字をとって UMA (ユーマ)と呼ばれることが多い。(wikipedia参照)
財布宣言をし、走り出したはその名前を思い出し、記憶を頼りに校舎へと逃げ込み、見事にUMA愛好会の模擬店にたどり着いた。
興味深い話が数多く講演されていて、きっと自分は今キラキラした目をしているだろう、と思う。
「みーっけ」
隣に座って来た影は赤也のもので、抵抗することもなく素直に手を掴まれる。
少し眉を寄せながら「何で分かったの?」と聞けば、「いつものお前の行動から見てここだと思って」と返ってきた。
・・・いつものあたしの行動?
ちょっとネッシーの本とか買って帰ったり、都市伝説の番組は全部チェックしてたり、『未確認動物UMA大全』とかいう本を持って帰ったり
暇なときはちょっと講演に行ってみたりとか・・・それだけなんですけど?
まるでわからない、という顔をしているに、呆れ顔で「わかってねーのかよ」と赤也が呟く。
「ま、いーや!財布も見つかった事だし、外回ろう!」
「まだ財布とか言ってたのかよ、お前・・・」
□
「酔った」
げんなりした表情で、頭を抱えてうずくまるに、赤也が「大丈夫か?」と背中をさする。
自分が人の多いところと無駄に広い場所に酔うことを、すっかりしっかり忘れていた。
「中入ろうぜ。お前もきつそうだし」
「うん、そうする」
普段のテンションと打って変わった、あり得ないほど静かで低テンションのを、奇妙な物を見るような目で見てしまう。
木陰で一休みしながら、校舎内の模擬店を回ることにして、パンフレットでどこに行こうか会議をすることにした。
「すまんねぇ」と、戻ってきたテンションにのせて、おばあちゃんっぽく枯れた声で言えば、「バーカ」と赤也が笑う。
「どこいくよ?」
「えー、ここはやっぱオバケ屋敷じゃない?」
「・・・オバケ屋敷・・・」
赤也の反応にニヤリと口端を上げ、「ふぅん、赤也怖いんだぁ」と挑発すると、思った通り「ちげーよ!」と待っていた反応を見せてくれた。
「よし!じゃあオバケ屋敷に行こうじゃないか!」
「ちょっと、ちょっと待てよ?」立ち上がったに制止を入れ、赤也は心臓に手をあてて深呼吸を繰り返す。
それを笑いながら見ていたは、「あたしも怖いから護ってね、赤也」と悪戯に言う。
「うわっ、お前これ以上緊張させる気か!?」
「当たり前じゃん。男らしくなかったら、真田に言って喝入れてもらうから」
「ッ!」
”真田に喝”の部分で、一気に顔を青くした赤也に微笑しながら、行こう、と手を差しのべる。
その手を取らずに立ち上がった赤也が「普通は男がするもんだろ」と顔を赤くしながら、の手を引いた。
□
順番待ちをして、やっと教室のドアの前に立ち横を見ると、赤也が顔を真っ青にして「ヤベー」と何度も呟いていた。
困ったように笑いながら「帰ろうか?」と言うと、「んなことできっか」と膨れる。
「仲がよろしいんですね。お付き合いされてるんですか?」
二人のやりとりを聞いていたのか、はたまた今だ繋いでいる手を見てなのか、ドアの前に立っていた氷帝の生徒が口元に手をあてながら言う。
長い髪を揺らして笑う小柄な少女に、「いえ、兄弟です」と言おうとすると、赤也が割ってはいる。
「いや、今アピール中」
え、と固まったを横目で見ながら、「行くぞ」と赤也が手を引く。
女の子も微笑みながら「いってらっしゃいませ」とドアを開けてくれる。
「それでは、このオバケ屋敷のルールを説明します。」
教室に入ると、男子生徒が立っていて、この模擬店の説明を始めた。
「オバケ屋敷、というよりも、この教室にいるUMA達と戦うゲームです。
UMAの他にも、妖怪やオバケも出てきますから、今から渡す銃で倒してゴールを目指してください。
UMA達は人間を襲いますので、お気をつけておすすみください。
尚、携帯の電源はお切り下さい。それから、UMAを倒すと鍵を手に入れられるので、それで前へ進むといいでしょう。
それでは、どうぞ」
”UMA”の言葉に敏感に反応を示したが、うきうきと渡された拳銃を受け取る。
もちろん拳銃は赤也にも渡され、「なんだよ、脅かすなよな」と、単にオバケ屋敷をする訳ではないことがわかり、安堵していた。
部屋の中に入ると、今までに見たこともない変な動物がうようよいた(中身はもちろん人間)。
こいつら全員倒して鍵を手に入れるのに、どれだけ時間がかかるのだろう。
赤也がそう思ったのと同時に、が一匹のUMAの頭に拳銃をピタリとくっつけ、ふわりと綺麗に笑った。
「はーい、UMAさん達注目!
こいつの命が惜しければ、鍵持ってるやつ、出てこい。さもないとコイツ・・・潰すよ?」
どんな人間でも、クラスメイトが拳銃(偽物だと分かっていても)をつきつけられ、笑顔で潰すよ?なんて言われた日にゃ怖くて眠れないぞ?
大人しく出てきたUMA(えらい、きっとお前は世の中を上手く渡っていけるぞ。)が怯えながらに鍵を渡す。
「ありがと」
それを無表情で受け取ったが、赤也を振り向いて笑顔で「鍵奪取!」と鍵を見せた。
こいつ、ゲームってホントに分かってるんだろうか
そう疑いたくなるほど、とても嬉しそうに微笑んでいるに、「よかったな」と頭を撫でる。
何で俺こんなにコイツに弱いんだ?惚れた弱みってヤツか!?
「さー、次行こう!ゲームは楽しまないと」
この調子で次々と鍵を奪取したと赤也は、最後のボス部屋に足を踏み入れた。
メイクと衣装で飾った魔王的な美少年が、椅子に座ってこちらを見、「君達の戦いぶり、しかと拝見してたよ」と艶やかに微笑む。
さぞかしこの部屋に来ないでくれと願ったんだろうな、可哀想に
隣でふるふると震えだしたを見て、「どうした?」と微笑したまま魔王が言う。
「ヤンデレ!?」
「は!?」
お前何が言いたいんだ!
いい加減心の中でツッコミするのが面倒くさくなった赤也が「さっさと倒すぞ、」と肩を叩く。
「あの、ボスさん。あなた魔法とか使えるんですか?
それとも剣?あ、その杖で魔法使うんですか?ひょぉって風が吹くとか?金かけてますねぇ」
質問攻めしたあげく、最後には勝手に落ちを付けてシミジミと語ったを異物を見る目で魔王が見る。
何で俺こんなヤツ好きになったんだろ?
赤也が切実に自分に疑問を抱いているのを余所に、は先程の魔王に負けず劣らず、今まで鍵を奪取するよりも、もっと艶やかに微笑む。
「あたしの為に、潰されて?」
それまですっかり魔王を演じきっていた少年が、「ひぃッ」と声を上げ、おずおずと鍵を差し出す。
その笑顔のまま鍵を受け取り、「ご苦労ご苦労」とそいつの頭を撫でる。
最後の扉を開けると、部屋中にパチパチと拍手が鳴り響く。
「おめでとうございます!オプション機能を使わずにクリアされた方は、あなた方が始めてですよ!」
後から聞けば、銃にはオプション機能というのがついていたらしく、助けを呼べたらしいがそんなのまるで必要なかったのは何故だろう。
差し出された優勝商品を、「いらない」とが突き返す。
「これいらないから、八位の商品と三位の商品頂戴?ダメかな?」
「いえ、いいですけど・・・本当にいいんですか?」
優勝商品は、ロンドンへの無料招待ペアチケットで、それをちらりと見て、は「うん」とあっさり言ってしまう。
「だって、ペアだったらみんなで行けないもん。
それより、三位のPS2のゲームセットで赤也と遊んだ方が楽しいし、八位のテニスボールとタオルの大量セットもらったほうが特だしね」
当然、と言いたげな顔で優勝商品を生徒に受け取らせて、「他の人にあげて?」と笑って見せた。
「きっとチケット君も、嬉しそうにもらわれたほうが嬉しいよ」
□
PS2のセットと、テニスボールとタオルの山を二人で分担して持って帰り、さっそくPS2をテレビに繋ぐ。
「今日は楽しかったねぇ」
「あぁ。お前の勇姿をよく見物出来た」
「そうかそうか。それはよかったでござる」
何故かPS2をとばしてwiiを買った赤也は、PS2のカセットを買っては友達とか先輩とかの家でしていたそうだ。
そんなゲームカセットをたくさん持っていることを知っていたので、はそれを最初から狙っていたらしい。
「無双しよ!三国無双!あたし負けないから!」
「、ゲームとかできんのか?」
まっかせて!と胸を張ったに、「俺ぜってー負けないからな」と言いながら、キャラクターを選ぶ。
「え、ちょっと待ってよ!その武将あたしが使うから!」
「無理!俺これしか使えねー!」
ぎゃーぎゃーと騒いだ挙げ句、お母さんから怒られるまで、勉強もせずに夜中までゲームをしていた。
明日はテニスボールとタオルの山を部室に持って行かなきゃな。

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