「リョーマ、どこ行くの?」 「いいから。黙ってついて来て」 あの後、二人でウィンドウショッピングをしたり、スポーツ用品店に行ったり。 なんやかんやで時間は流れるもので、あー終わってしまうなあ、とどことなく気持ちが沈み始めたころ、 突然「行くよ」と行って行き先も言わず歩き出したリョーマにはただ引っ張られながら電車に乗り、さらにさらに歩いて半ば強制的に大きなビル街へと足を運んでいた――ここどこ? 首を傾げつつきょろきょとと辺りを見渡す。 その時「あ、ねーちゃん」という能天気なの声が聞こえて顔を向けると、千石と一緒に歩いているがいて、はパチリと瞬きを二回した。 「あんた、こんな所で何してんの?」 「ねーちゃんこそ、こんな所でもいちゃついてんの?」 問いを問いで返されてと千石の視線を辿れば、リョーマと手をつないだ自分の手に視線が辿りついて、は「ぎゃ」と悲鳴をあげると大きくブンブンと首を横に振る。 「これはさ!それはさ!っていうかアンタらだってつないでんじゃん…!」 「あたしたちは別にいいの」 「正真正銘いちゃついてるからね」 「「うわ。うざー」」 おお、リョーマとハモッた! 何だか嬉しくてニヤニヤ頬が緩んでしまうと、間をおかず「ねーちゃんキモイ…」とに言われ、は開き直るように胸を張る。 「いーもん!気にしないもん!しぶといからねッ」 「…めちゃめちゃ根に持ってンじゃん」 ぽそ、とリョーマの声。もちろんだとも、一生根に持ってやるんだから!がぶぅたれていると、は「そんでさ」と言って辺りをきょろりと見た。 「ここどこな訳?」 の問いにも大きく頷き返す。どうやらも千石に引っ張られて来たらしい――ということを理解した時、千石とリョーマはそろってこのビル街でも一番大きなビルを指差した。 「「…ホテル?」」 「用があるのは、一番下のホールだけどね」 「残念なことになあ…「黙れ不純。かみ殺すぞ」」 お前ホントに中三か?ああん?と跡部さながらのガンを飛ばしていると、リョーマにぐぃと引っ張られて無理やり先を急がされた。も千石に連れられて歩き出す。なんなんだ一体。 麗しいほどの立ち姿のホテルボーイに迎えられ、「みなさんお待ちですよ」とエレベーターに乗せられて一番下の階へ。 みなさん? ととが顔を見合わせた時、チーンと地下一階について、ドアが開いた瞬間。 パンパンパンパーン!!!!!! 「「!!!!!!!????????」」 ものすごい音と共に目の前をすごい色が飛び交って、焦げたにおいが鼻をつく。 ギョッと目を見開いた二人が白黒させていると、突然目の前に飛び出してきた菊丸が「おっそいぞー!」と両手を広げた。 「もうとっくに準備終わってたんだからな!くそくそ!」 岳人までいる。 忍足に宍戸に長太郎に――と、一目瞭然な氷帝メンバー。 「!すげぇぞ!高級和牛を目の前で焼いてくれるんだってよ!つーか、食べれるんだぜ!」 とおおはしゃぎのブン太と赤也、さりげなくもう持っている仁王に、「仁王君、乾杯がまだですよ」と柳生が苦言して、困り顔のジャッカルの後ろで、穏やかな顔でこちらを見ている三強がいた。 驚く間もなく今度は橘と伊武、神尾が目の前に立ち、二人に笑顔を向ける。 「約束通り、今日は腕をふるって来たんだ。ぜひ食べてくれ」 「つーかさ、君たちって本当に台風なんじゃないの?騒ぐは騒ぎは起きるわ、今度は帰るって…振り回されるほうの身にもなってほしいよなあ…あ、そろそろ乾杯だろうな。神尾、ジュース」 「お前がいけ!今日はリズムを最高にあげてるんだからよ!」 「だから、そのリズムで取って来てっていってるんだろ?無駄に高いリズムは活用しなきゃただの無駄なのになぁ…」 「もう無駄っつってんじゃねぇか深司!」 「あれ…観月さんは?」 「なんかアイツらが来たとたんあっちに向かって駆けていったぞ。ハンカチ握りしめてな」 「分かりやすい…」 「やあさん、今日の服似合ってるね」 「…佐伯君」 「こんなの、あまりにお別れが早すぎるよ…!先輩…ッ、さん……!!」 「え?葵君テンション高くない?酔ってんの?…あ、いつもか…」 わらわらとみんなが集まって来て、いつの間にか取り囲まれた二人はもみくちゃにされながら会話するしかできない。 ちらりとステージを見ると、横断幕に「お別れ会」とデカデカ書かれていて、なるほどお別れ会のためにみんな集まってくれてるんだ、とジーンと感動を噛みしめた時、 「ワイはまだ一緒に遊びたりんのやアアアアァアア!」という関西弁に二人はン?と固まった。 「わがままいうたってしゃーないやろ」 「せや金ちゃん、今日めいっぱい遊べばええやない」 「今日も遊ぶ!でも今日だけなんて嫌なんや――!」 「「「「「「…ゴンタクレ…」」」」」」 え、っていうか何で四天法寺? 「凛!立海の奴らがいってたんだけどよぅ、あっちに高級和牛あるらしいぜ!」 「しんけん!?裕次郎、わったーが一番さあ…」 「そんなことでまで一番競わなくてもいいでしょ」 「「わったあがうちなー比嘉中どおおおぉおおおおおおおお!!!!!!!」」 「…………早いですね。あの二人。知念君、わたしたちも…って、知念君?…いない…」 寂しそうに光る木手の眼鏡…って… 「比嘉中までいるしッ」 「高級和牛食べたい!あたしが一番なんだけどッ!」 「ちょ、!ツッコミを一人にしないでッ、っていうかみんなの範囲広くない!?四天法寺も比嘉中も来てるの!!??っていうかいつの間に全員に広まってたの!?!?」 「あたしは立海メンバーとアホベ様にしかいってないよー」 よー、よー といい匂いのするほうから声が聞こえてくる。「ってもう行ったんかい!」とが全身全霊のツッコミを入れていると、傍らに立っていたリョーマが「俺がいった」と名乗り出、そして 「俺様が会場を用意したってわけだ。感謝しな」という麗しい声に振り返ると、見事にスーツを着こなした跡部が立っていた。 「跡部君…」 「から聞いてすぐに、越前から連絡が来てな。このホテルは跡部財閥のモンだ」 「…そう…なんだ」 「なんや皆にぎやかでええなあ」 「これは越前や切原さんが帰って来た時に歓迎会をするのも、楽しそうでいいね」 「お。さんせーい、こんな豪華な食べ物が食べれて騒げるなんてサイコーっすよ!」 「最初の目的見失ってンな、バカが」 「ンだとマムシ!」 「やんのかコラ!?」 あーあ、またやってるよ… 二人が胸倉をつかみあうのを遠目で見ていただが、何となくくすぐったくて思わず笑ってしまった。とのお別れ会、越前さんと切原さんの歓迎会。本当に温かい気持ちになる。 「さ、乾杯にしようじゃないか」 グラスを持って来た幸村の優しい瞳には頬笑み返して、グラスを受け取ると、跡部からグラスを受け取ったリョーマに手を引かれてステージに連れて行かれた。 「ちゃん、乾杯の音頭しなきゃ!」 「え、待って!今肉が…!」 「乾杯しなきゃ食べられないだろぃ!?」 「そーだ!さっさと乾杯しろッ」 ぐぃぐぃと千石、ブン太、赤也に背中を押されたもステージにあがって、グラスを持った二人は顔を見合わせる。 乾杯の音頭ってかんぱーいでいいのかな?が尋ねようとした瞬間、突然、がマイクをぶんどった。 「切原こと、と!」 ほれ、とマイクを渡されて、は続ける。 「越前こと…は…?」 「皆のことが…」 の言葉に自然とは続きがわかった。せーので息をすうと、大声量でマイクに向かって叫ぶ 「だああああああい好きだあああああああ!!カンパ――――イ!!」 「「「「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」」」」 カチャンとグラスが鳴って、一気に会場が活気づく。はもちろん真っ先に高級和牛へと走っていき、は橘さんの手料理が置いてあるテーブルへと急いだ。 「うわ…!」 見るも鮮やかな男料理にはキラキラと瞳を輝かせて、「いただきます!」と手を合わせる。 「美味しい…」 「さあ、どんどん食べてくれ」 「いただきま――す!」 「、和牛ここに置いとくよ」 「わーい!ありがとう幸村君ッ」 「ねーちゃんズルい!なんで自分で取ってないのに食べれるわけ!?」 「うり、。俺の半分やる」 「凛りん…神ッ!!!!!」 「それにしても、妙だな。全国大会で競う前に、こうやって各校が集まるというのも」 「…これがアイツらの力だろう」 「確かにな」 「せやかてホンマに妙やな…まるで大家族みたいや」 あはは、と笑う白石。 知り合いというよりもっと近くて、友達というのにはなんだか照れくさい。 でも学校や仲間も飛び越した輪に、人ごとのような空気もない。ただみんなが今日という日をいい日にしようという空気に溢れていて、それがにぎやかなみんなの顔に溢れてる。 白石の温かな笑顔の中、スポットライトがステージに当たって、面々がニヤリと笑うのにも気づかない二人―― 出し巻き卵を口に入れたと肉をくわえたが視線を向けると、突然聞きなれたメロディーが聞こえて来た。 思わず息をのむ なんで…この歌… マイクを握ったリョーマが息を吸う――「全て抱きしめて」 「「届けたい未来へ」」 「「この願いを信じて――」」 その瞬間、会場中の選手たちが一斉に声をあげた。 「「「「「「「「「歩いて行くーだけ――!」」」」」」」」」」 イントロでボロボロと涙が零れてくるのがわかる。なんで、なんで 隣を見ると、が唇を噛みしめている姿に、尚更心が震えた。 「もう忘れよう 昨日の悩みはいらない」 ――アホベ、アホベとてめぇだって人の名前まともに呼んじゃいねぇだろうが!このガキ!ガキ、ガキガキ、ガキ! ――んだと!?アンタの方が十分子どもでしょうが!樺地居ないと何も出来ないくせにっ ――てめぇ…表に出ろ…白黒はっきりつけてやる ――望む所よ。真の王者はがっくんだって事をはっきりさせようじゃない ――跡部君って、色男ですよね ――掴んだって、てめぇじゃなきゃ意味がねぇよ 「明日はまたすぐやってくる」 ――幼稚言うな馬鹿侍! ――侍いうな! 「そんな辛さなんて誰にでもあるさ」 ――僕は君の友達だからね 「ひーとりきりじゃない 周り見渡したら」 ――越前じゃん!何々、練習ならもう終わっちゃったよー 「見えない未来に」 「怯えることはない」 ――きゅんって、 恋に落ちる音がしたんや… ――綾波レイ 「怖くはない 振り向かないで」 ――俺の第一印象。アンタ、すっげぇ変なヤツ ――ま、それも一つの解釈だね ――でも、すっげぇ面白そう ――赤也がこっち向いてくれなきゃ、あたしが赤也を見てても赤也はわからないでしょ 「「「「「「「あと少しの勇気があればいい!」」」」」」」」 「終わらない未来で」 「「「「「「「「涙を」」」」」」」」」 ――さっきの姉、かっこよかった。俺、結構気に入ってるよ“今”の姉 ――この道、切原先輩が俺達の為に用意した道って事 ――分かり切った事聞くの止めてよね。 俺はがどんな姿でも絶対に見つけだすに決まってるじゃん ――俺はが好き ――リョーマ…!あなたが好きです……ッ 「見つけたい答えを」 「「「「「「「「ぬぐって〜」」」」」」」」 「両手広げ今すぐ受け止めたい」 「「「「「「「「「ここからぁ〜」」」」」」」」」 ――千石さーん、鼻の下伸びてますよー ――捺沙那ちゃんの笑ったトコ、見れた ――もう一回、ちゃんと言うよ。 俺はちゃんの笑顔をいつも見ていたい。君が好きだ ――それでもあたしの一番はあなただった ――俺やっぱりちゃんが笑ってくれるのが一番嬉しい 「すべて抱きしめて」 「「「「「「「「いますぐ」」」」」」」 「届けたい未来へ」 「「「「「「「「明日へ」」」」」」」」 「この願いを信じて…」 ――巻き込まれるのは勘弁だけどよ。お前、結構賑やかでノリがいいから…また、遊びに来いよな ――それって言いようによっては地味って…「噛み殺すぞ!」 ――二人とも、世間話をされてください! ――俺のスピードはこんなもんじゃないぜ!リズムに…ッHIG「「はーい」」… ――どんな手段でも勝ちは勝ち…ッ!勝ちにこだわるのがスポーツマンと言うものでしょ!」 ――知ってるか?世の中にはスポーツマンシップって言う言葉があるんだよ ――凛さん!あたしもかなさんどー! ――貴方達がテニスが大好きなように、私はテニスをしてる貴方達が大好きなんです ――ここからは俺の意見だけど、越前さんの空が曇って居るのに、俺から見て越前さんの海がこんなに綺麗に見えるなら、 晴れたときは、きっと誰にも負けない位美しくなると思う ――俺たちは、 君と同じコートに立って試合ができたことを、嬉しく思う ――もっと高い声で!はいせーの! ――「「あーっはっははははははははっはっはははは!!!!!!!!!!」」 「「「「「「「「「「「「「歩いて行くだけ―――!!!!」」」」」」」」」」」」」」 みんなと一緒に歌った、大きな声で。 どうやらリョーマがのipotを持って夜遅くに乾の家にいき、乾が財前にメールで添付。メロディーを財前がパソコンで復元して、各校にメールで添付して送られたらしい。 最初はメンバーだけが歌う予定だったのに、全員必死で練習したんだとか――あの三日の間で?とが驚きながら、笑いながら、泣いた。 ああ 神様ありがとう 「今までありがとうございました。これからも、…よろしくお願いします」 「こちらこそ!よろしくね、ちゃん」 「おやすみなさい、また今度」 「おやすみ。また…今度ね」 「リョーマ、あなたを好きになって…本当によかった…ありがとう」 「…うん」 「おやすみ」 「おやすみ」 また違う世界に戻っても、わたしたちの心はいつだってあなたたちと共にあります 大好きだよ みんな――またね ![]() |